肩書き捨てたら地獄だった:宇佐美典也さん著作
上に上に登るほど、底辺に堕ちたときの落差は大きく、
上に上に登るほど、いろんなプライドが増えるんだろうから、
きっとこの本を書いた、元東大・元官僚の宇佐美さんの「落差」はよっぽど大きかったんだと思う。
GWが終わると、転職したい人が増えるのは
人材ビジネスに関わるキャリアカウンセラーの私たちあるある、だ。
転職を考えるきっかけはちょっとした時から始まる。地元に帰ったり、友人と比較してみたり、やっぱり起業しようとか、自分でビジネスをしようと思ってみたりする。
そうするといつも過ごす環境がふと自分の職場環境が色あせてきたりする。
「・・・やっぱり自分らしいことをしよう。」
と思ってる人がいたら隣にいって、一言伝えてあげたい。
「自分だけは特別、みたいな顔してますが
それ、皆が考えることよ。」と。
「違うんです、色々目につくんです。転職のこと、起業のこと・・目の前にチャンスが転がってるような気がして、試してみたいんです。」
と思っている人がいたら隣にって、両肩掴んでガクガク揺らしながら言ってあげたい。
「どんな人も気をつけないと、自分にとって心地のいい情報だけを集めちゃうんですよ!!
それを、確証バイアスとか、カラーバス効果とか言うんですよ!!!ちゃんともっと考えなよ!」と。
その思っている人って
昔の私ですけども。
肩書き捨てたら地獄だった、という本を書いた宇佐美さんは、
東大卒業、経済産業省のキャリア官僚というキャリアを捨てて、自分でビジネスをしようと独立したものの、
「自分がここまでやってこれたのは、経産省や東大卒のエリートという看板があったからこそだ・・・」と絶望の中で気づく。
貯金残高は2万円になり、周りに見捨てられ、仲間も去っていく、まさにどん底の状態だった。
ある瞬間、あることから這い上がり、
本を出版するようにまでなったが、
その、這い上がり方から「個人」として生きていくためにできることをなりふり構わず行い、そして、その中で見えてきたものをわかりやすく教えてくれる。
この本は
・地獄になったらどうなるのか
・自分自身のブランディングの仕方
・そもそもの日本の「働く」という形はどうなっているのか
・そしてこれからの働き方
について、すごい真面目に、丁寧に描いてある。
これから先は、「会社」ではなく「個人」として働くことが増えて行く世界になると予想している人が多い。
個人で食べていくには、個人としての
「ブランド」「スキル」「マネジメント」やITスキルの土台が必要になる。
海外のように、
「ーー会社のーーです。」ではなく「ーーです。ーーの仕事をしていて、会社はーーに所属しています。」という感じで、
自分が何者で、何をしている人間なのかを強く発信する必要がある。
外に出ることや、自分でビジネスをすることはきっと簡単じゃない。自分の責任で何かを決められる自由には、その数倍、自分のことは自分で責任を持つ重圧がやってくる。
そんな重みへ覚悟した上で、自由を選ぶかどうかということを
思いつきのように考えてはいけないように思う。というと語弊があるので、考えるのは自由だけども、計画はもっと悲観的に考え、覚悟が決まった上で楽観的に行動したほうがいいなと思う。
大企業で働いていると、どんなに気をつけていても「自分でも何か出来そうな気」になってしまう。
そして、大きな組織にいることに窮屈になり、外に飛び出したくなる。
そしてそこで初めて気づく。自分がどれだけ大企業に守られて生きていたかということを。
まとまった休みがあって、そこで自分のことを考えることはすごく良いことで、
そこで発見した気づきや、決意にそって進んでいくことも良いことだと思う。
だからこそ、ちゃんと自分にとって耳の痛い指摘をしてくれる人の意見もしっかり聞くことって大事だと思う。
この本はそんな耳の痛い話を先人の教えとして教えてくれる。
日本がどうして新卒一括採用なのか、そして今、どうして「会社」ではなく「個人」で働くことが増えて行くのかを
丁寧に教えてくれる本なので、そこについてはまた別の日にお伝えしたい。
すっごく余談だけど、
「お金を稼ぐ」ということの大変さを強くおしえてくれた2つのエピソードを思い出した。
一つ目は、仕事ではない内容で、知り合いを集めてワークショップをすることになった時のこと。
私は「本業じゃないし」と思って仕事の合間にちょこちょこ進めていた時に、先輩に集客についての相談をしていると
突然先輩から叱られた。
「あんたねぇ、さっきから本業じゃない、合間で進めてるっていうけどね、人からお金を取るんでしょうが!
人から1円でもお金を取るんだったら、その取り組みはあんたにとって仕事と同じぐらい真摯に取り組まなきゃいけないのよ!
中途半端に進めるあんたが人からお金を取る価値なんてないのよ!やるならちゃんとやりなさいよ!」。
と叱られた。それまでヘラヘラしていた自分が恥ずかしくなった。というか、痛いところ突かれた。
人からお金を出してもらうって、それくらい大事なことなんだよなぁ。
二つ目は、とある社長との会話の中で、「いつかこんなサービスを作ってみたい」と話していた時のこと。
「お前には出来ない、お前は何がわかってるの?どうやって儲かるの?そのサービスを作ったとして起業したとして、何年生きていけるの?
100年続く企業を作ろうと思って作ってないお前になんかできっこないんだ。それぐらい、日本の社会は厳しいんだ。」
と散々問い詰められたことがある。
そんな軽い気持ちで言ったわけじゃないのに、何も言い返せなかった悔しさと
どうしてそこまで言われなきゃいけないんだろう、と
私のやろうとしていることは間違いだったのだろうか、と
悔しくて泣きながら帰ったことがある。
でも、今振り返るときっとそれは愛情だったんだろうなと思う。
人の意見には真摯に聞かなきゃいけないけど、人から言われたぐらいで志まで変えてしまうなら
それまでだったんだなと思う。
外に出ると大変なことがたくさんある。
良い感じの顔した、甘い蜜は多いし、
面倒な感じの顔した、大変なことが多い。
ただ、面倒な感じの大変なことは、振り返ると良いことが多い。
自分がまどわされないように、足元すくわれないように、
耳の痛い指摘をしてくれる人を大事にしたい。謙虚に聞きたい。
指摘をしてくれる人も、指摘をしてくれる本も。
肩書き捨てたら地獄だった - 挫折した元官僚が教える「頼れない」時代の働き方 (中公新書ラクレ)
- 作者: 宇佐美典也
- 出版社/メーカー: 中央公論新社
- 発売日: 2014/12/09
- メディア: 新書
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